まず知っておいてほしいこと

「治療法をどう選べばいいかわからない」という気持ちは、乳がんと診断された多くの方が感じることです。一度に手術・放射線・薬物療法など、なじみのない言葉が次々と出てきて、混乱するのはごく自然な反応です。

「全部一気に決めなければいけない」ということはありません。
治療は段階的に進んでいくものです。まず最初の一歩として「主治医の先生に自分の疑問や希望を伝えること」から始めましょう。


乳がんの主な治療法

乳がんの治療は、主に以下の4つを組み合わせて行います。どれが必要かは、がんの状態・大きさ・タイプ・ご本人の状況によって異なります。

① 手術

がんのある部分を取り除く治療です。

種類 内容
乳房温存術
(にゅうぼうおんぞんじゅつ)
乳房の一部を残しながら、がんを取り除く手術
乳房全切除術
(にゅうぼうぜんせつじょじゅつ)
乳房全体を取り除く手術

どちらが選べるかは、腫瘍(がんのかたまり)の大きさや位置、乳房全体とのバランスなどによって変わります。「乳房を残したい」という希望がある場合は、ぜひ主治医に伝えてみてください。

② 放射線療法

放射線を使って、残ったがん細胞を取り除く治療です。温存術を選んだ場合は、術後に行うことが多いとされています。1回の照射(放射線を当てること)は短時間で、通院しながら続けられます。

③ ホルモン療法

乳がんの中には、女性ホルモンを栄養にして育つタイプがあります。そのタイプ(ホルモン受容体陽性)の場合、ホルモンの働きを抑える薬を使う治療が選択肢となります。

④ 薬物療法/化学療法

いわゆる「抗がん剤」を使ってがん細胞を攻撃する治療です。すべての方に必要なわけではなく、がんのタイプや状態によって判断されます。


治療法の選択に関係する「乳がんのタイプ」

乳がんには、細胞の性質によっていくつかのタイプがあります。このタイプによって、有効な治療法が変わってきます。

確認しておくと良い主なポイント

  • ホルモン受容体陽性・陰性:ホルモン療法が有効かどうかに関係します
  • HER2(ハーツー)陽性・陰性:特定の分子標的薬(特定のがん細胞だけを狙う薬)が有効かどうかに関係します
  • Ki-67の値:がん細胞の増殖スピードを示す数値です
  • ステージ(病期):がんの広がりの程度を示します

「自分のがんのタイプがよくわからない」という方は、次の診察で「私のがんはどのタイプですか?」と確認してみましょう。


よくある疑問 Q&A

手術は絶対に受けなければいけませんか?
乳がんの治療において、手術は基本的なステップとして位置づけられています。ただし「どのような手術をするか」には選択肢があります。「手術が怖い」「乳房を残したい」などの希望や不安は、遠慮なく主治医に伝えてください。希望を伝えることで、一緒に最善の方法を考えてもらえます。
抗がん剤は全員に必要ですか?
すべての方に必要というわけではありません。ホルモン受容体陽性のタイプでは、ホルモン療法だけで対応できる場合もあります。また「オンコタイプDX」などの遺伝子検査を用いて、抗がん剤が必要かどうかを判断できる場合があります。「抗がん剤は必須ですか?」と主治医に直接確認してみましょう。
セカンドオピニオンを受けてもいいですか?
セカンドオピニオン(別の専門家に意見を聞くこと)は患者さんの権利です。「主治医に申し訳ない」と感じる方も多いですが、医師はセカンドオピニオンに慣れていますので、気にされる必要はありません。「今の方針で進んで大丈夫か確認したい」というときにも、有効な手段です。
遠方に住んでいる家族として、どうサポートすればよいですか?
診察に同席できなくても、患者さんと一緒に「聞きたいことリスト」を電話で作るだけでも大きなサポートになります。また、病院によってはオンラインでの診察同席ができる場合もありますので、病院に確認してみるのも一つの方法です。